• 記事検索
RSS

「一次生産者は知っている。」没原稿

以下は、1カ月前に新聞投稿し、本日現在のところ掲載がありませんので、没になったと思われるものです。


題「一次生産者は知っている。」

 田んぼの畔に大豆を植えて、少しでもとの想いで作物が作られていた。大した手伝いもしなかったが、畦が通りにくかったことは覚えている。水気の多い田とは違い、畑で大豆を作るには、「夏に夕立があり気温が下がらないと作れない。」と親が言う。10年以上前かな「もう、畑で大豆は作れない。」とも言った。現在、おいしいと思って飲んでいる豆乳の原料の大豆の生産国はカナダ。好物という訳ではないが薬だと思って毎日食べている納豆の大豆の生産地は北海道。いずれも、浦富より寒冷だ。

 温暖化で特産品が変わるという。津軽のリンゴは暑さで「日焼け」被害。農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)の推計では、2060年代に、リンゴの最適地は北海道に変わる。現在でも、津軽でリンゴから桃へ。「津軽の桃」は岐路に立つ日本農業の象徴だそうだ。桃と言えば岡山なのに。温州ミカンの適地は東北まで北上し、今の産地では栽培が困難になるとも言われている。農業者は作物を通じて、温暖化を切実に感じていると思う。

 風物詩であるスルメイカを干す風景を、地元の田後や網代であまりお見受けしなくなって久しい。海水温の低い北海道で、昨秋、赤潮の大量発生が初めてあり、ウニやサケが大量死したという。瀬戸内海で広島県と愛媛県の間に燧灘があり平均水深が24mと浅く気温上昇の影響を受けやすく、稼ぎ頭だった車エビがまったくいなくなったという。

 炭鉱のカナリアのように異変を知らせる事象は、もはや、そこら内中だ。

 農業にしても漁業にしても、そして、竹の繁茂が著しくみえる山々でたぶん林業も、一次生産者は充分に知っている。何を知っているか。今までどおりでは立ち行かないことを。

(文字数は、698文字です。)


コメント
name.. :記憶
e-mail..
url..

画像認証
画像認証(表示されている文字列を入力してください):