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ヒトの動機(おもしー322)

言葉を覚え始めた幼児が「わんわん」「お花」と言う。

こちらが「うん、かわいいね」「きれいだね」と言うのを待っている。

お返事せずにいようものなら機嫌を損ねてたいへんである。

本書によると、この些細なやり取りの瞬間に、ヒトは六百万年の進化を旅している。

と、書評の初めに書かれていました。


「進化的人間考」長谷川眞理子さん著(2023.4.16読売)です。

同じことの説明で、

幼児は「わんわんかわいい」「お花きれい」と世界を描写する。

しかも、言って終わりではなく、相手が自分の思いを受け取って共有していることを確認する。

つまり、単に発信するだけでなく、心と心がつながったことを自分で確認したいのである。

この入れ子構造の認識が「自意識」を生み、文化の蓄積を可能にする。

とあります。


なにか当然のように感じますけれど、

それは、僕が、ヒトだから、当然と感じるのであり、

ヒトとチンパンジーのゲノムの違いは数%のみなのに、


チンパンジーは、そもそも「話したい」と思わないらしいのだ。

ともあります。


つまり、

幼児が求めている、お返事、自分の思いを受け取ってくれて共有することの確認、

それらを、かれらチンパンジーは求めない。

そう思うと、僕がヒトであるからなのか、ちょっと、不思議。

だから、そのやりとりの中に、

ヒトとチンパンジーの共通の祖先から分化し、

ヒトの600万年(他の本によると800万年(?))の進化の旅程が見えてくる。

そう、著者が述べ、評者が伝えている、と読みました。


他にも、

ヒトは共同繁殖なので、親だけで子育てをするようにはできていない。

食性からみたヒトの適正密度は、一平方キロ当たり1.5匹

男女の脳は性的分業の生物学的な結果か。

などとありました。


どこかの図書館で、お借りして読んでみたい。

著者のご専門は、行動生態学、自然人類学とありますが、

賢い方々が、

身近な幼児の振る舞いなどを用いて、ヒトを説明してくれる。

これはありがたいこと。

ただ、書評のなかに、

思わず膝を打つ発見も多い。

と、書かれていましたが、

それは、学のある評者だから、思わず膝を打たれるのでしょうけれど、

僕が、一回でも、膝を打てれば、それは、今まで知らなかったことや、おぼろげな感じであったことの、文字化になる。

これも、文化の蓄積の、末端。底辺拡大。

でも、文化などと高尚に述べる必要はない。

ヒトにとっては、人として生きている生活の中で切り取れる断面のひとつの理解が深まる。


自分の思いを、他の人と共有したいとすることは、

幼児だけでなく、人すべての、何かしらの思索や行動の動機になっている。

だから、

チンパンジーの社会では、事件にならない事象でも、

人間社会では、大きな事件や、多くの人を巻き込んでしまうことなっていくことだってあるような。

そんなことばっかりだったりして。

そんなんなら、ヒトは、進化しているのかなあ。

そんなことをおもってしまいました。

「おもし=新聞記事などを読んで、おもってしまったことです。)」


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